日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BP-217
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突然変異と発癌の機構
メダカにおける逆遺伝学的手法を用いた変異体の作製
*石川 智子亀井 保博金 鎭炯音在 信治藤堂 剛
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抄録

近年数多くの実験モデル生物が開発されてきた。それらの多くは、遺伝学をフルに活用できるという利点を有している。メダカは、我が国で開発された実験モデル生物であり、実験動物としての歴史は長く、その間に培われた遺伝学的知識の蓄積が豊富である。更に近年ゲノム情報の整備が進み、近代モデル生物として変身を遂げている。一方、ゲノム生物学時代の到来は、遺伝子の取得を容易にし、得られた遺伝子の生体における機能を解析するといった逆遺伝学的手法の必要性を増大させてきた。逆遺伝学には、標的とする遺伝子の変異体を自由に作成するいわゆる遺伝子ノックアウトの手法が必須である。しかしながら、遺伝子ノックアウトはごく限られたモデル生物でのみ可能であり、メダカを含む小型魚においてもこの手法の確立の必要性が叫ばれてきた。そこでTILLING法を用い、標的とする遺伝子の変異体を自由に作成する技術の確立を試みた。TILLING法とは、Targeted Induced Local Lesions IN Genomeの略であり、ある程度の遺伝学が可能な実験モデル生物を対象に、目的とする遺伝子の変異体を自由に作成する方法として近年開発された。本法では、まず雄個体を化学突然変異原(ENU)で処理しF1を得る。このF1雄個体を多数樹立し、それらの精子とゲノムDNAをセットで保存しライブラリー化する。このライブラリーのゲノムDNAを基質に、標的とする遺伝子のエクソンをPCRにより増幅し、変異を検出する。変異が同定できれば、セットで保存している凍結精子を起こしin vitro 受精により変異個体を得る。我々は、約5700個体からなるライブラリーを作成し、変異スクリーニング法を確立し、いくつかの遺伝子について変異体スクリーニングを行った。約300kbに1個の割合で変異が導入されており、充分スクリーニングに利用できる事が確認でき、既にいくつかのナンセンス変異体を得ている。変異体の解析を含め、スクリーニング全体の概要を紹介する。

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© 2007 日本放射線影響学会
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