主催: 日本放射線影響学会
DNAヘリカーゼはDNA複製、修復等DNA代謝に必要不可欠な酵素の一つである。DNAヘリカーゼのいくつかは、その欠損が正常なDNA複製や修復反応を妨げることにより遺伝病の原因となることが知られている。また、それらの遺伝子を欠失した細胞ではDNA損傷に対して高感受性となることから、DNA損傷に対する生体の防御に重要な機能をもつことが明らかとなっている。
酵母の遺伝学的解析から、SF Iファミリーに属するDNAヘリカーゼPIF1はDNA複製の円滑な進行に必要不可欠な因子であることが示唆されている。この遺伝子は、酵母から哺乳類まで広く保存されていることから、DNA代謝に重要な遺伝子であると考えられた。今回我々は、ヒトPIF1遺伝子を同定しその機能解析を行ったので報告する。クローニングしたヒトPIF1 cDNAは、641アミノ酸残基からなる69 kDaのタンパク質をコードした。ゲノム解析からPIF1遺伝子は、染色体15q22にマップされ、13のエキソンから構成されていた。PIF1遺伝子の発現は調べた全ての臓器でみとめられた。PIF1タンパク質の生化学的機能を明らかにするために、組み換えタンパク質を精製した。精製したPIF1タンパク質は単鎖DNA依存的ATPase活性をもつこと、5’-3’ヘリカーゼ活性をもつことを明らかにした。このヘリカーゼ活性は、フォーク構造をもつDNAに対して最も効率よく機能することが分かった。