主催: 日本放射線影響学会
臨床において、同じ病理組織型の腫瘍であっても、放射線治療に対し感受性を示すものと抵抗性を示すものがある。そのメカニズムとして、抵抗性腫瘍はヘテロな集団であり、放射線抵抗性クローンの再増殖が放射線抵抗性に関わるのではないかと仮定し、実験腫瘍を用いて放射線感受性試験とゲノム解析を行った。 放射線抵抗性マウス扁平上皮癌NR-S1から単クローン培養を行い、細胞の形状や増殖速度の異なる5種類の細胞株NR-S1a, -b, -c, -d, -eを得た。それぞれをin vitroにて0~8 Gy照射して各々の放射線感受性を測定した結果、NR-S1a/bは放射線抵抗性、NR-S1d/eが放射線感受性、NR-S1cがその中間を示し、MANOVA解析にて有意差が見られた(p < 0.001) 。次に各細胞株をC3Hマウス右大腿部に移植し、ガンマ線にて30 Gy、50 Gy照射し、in vivoにおける放射線感受性を検証した。NR-S1eは生着せず、他の4細胞株の非照射群および30Gy照射群では差異を認めなかった。一方、50Gy照射群はin vitroの解析と同様にNR-S1dにおいてNR-S1a/cよりも高感受性であった。同様にNR-S1各細胞株はin vivo放射線感受性もSCCVIIより放射線に対し抵抗性を示した。 ゲノム解析にはオリゴヌクレオチドアレイcomparative genomic hybridization (aCGH)法を用いた。正常肝細胞のゲノムとの比較では、8番染色体の全体的な増幅、14番染色体の全体的な欠失、9番染色体の部分的欠失、16番染色体の部分的欠失等が共通して見られた。NR-S1各株間でゲノムを比較すると、NR-S1eでのみ16番染色体全体の増幅が見られたり、NR-S1a/bでのみ1番染色体の部分的欠失が見られるなど、非共通部分も散見された。 以上、放射線抵抗腫瘍モデルを用いた検討を行った結果、腫瘍内の多様な細胞集団(heterogeneity)がその抵抗性に関わることを示唆する結果を得た。