日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CP-104
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放射線応答とシグナル伝達
スーパーオキサイド誘導性ydbK遺伝子のプロモーターとYdbKタンパク質の抗酸化機能
*米倉 慎一郎米井 脩治張 秋梅
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抄録
活性酸素種は電離放射線や酸化剤だけでなく、細胞内代謝によっても常に生じている。活性酸素種によって細胞が過剰な酸化ストレス下にさらされると、核酸やタンパク質、脂質といった生体高分子が酸化され、細胞に細胞死や突然変異といった結果がもたらされる。細胞内では活性酸素種の消去酵素やDNA修復酵素が酸化ストレスから細胞を防御するために働いている。細胞内の酸化・還元状態のバランスを保つために生物は様々な応答を行う。酸素分子が一電子還元されると、活性酸素種であるスーパーオキサイドとなる、さらに過酸化水素、ヒドロキシラジカルといった活性酸素種へと変化する。本研究室では、このスーパーオキサイドによって誘導される遺伝子をLacZ融合タンパク質として発現する大腸菌株を確立し、soi(superoxide inducible)遺伝子として同定をおこなった。これらの株のあるものはスーパーオキサイド感受性を示した。これらのsoi遺伝子群はsoxRSの支配下にあることが分かった。大腸菌ではこのsoxRSがスーパーオキサイドにより誘導される遺伝子を制御している。例えば、大腸菌にスーパーオキサイド消去酵素SodA、SodBが存在するが、このうち、SodAはSoxRSに依存してスーパーオキサイドによって誘導される。SoxRSのシステムは大腸菌に特有で、ヒトや酵母といった真核生物では保存されている転写制御ではない。しかし、細胞が守るべき活性酸素種の標的は、DNAをはじめ、多くの種で同一と考えられる。本研究ではさらに、これらのsoi遺伝子のクローニングと解析を行った。特定された遺伝子ydbKは、原核生物のピルビン酸オキシドリダクターゼと相同性があり、モチーフもよく保存されていた。そのプロモーターのクローニングを行い、誘導性について観察した。ydbKの欠損株は前述したとおり、スーパーオキサイドに感受性であった。そしてYdbK発現の機序と、細胞をスーパーオキサイドから守る機構について考察した。
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© 2007 日本放射線影響学会
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