日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CP-107
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放射線応答とシグナル伝達
放射線耐性及び長期放射線被ばく細胞におけるゲノムワイドなメチル化領域の探索
*井上 和也高橋 由明村田 和弘桑原 義和志村 勉福本 学
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抄録
[目的] 転写活性のある遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドのメチル化は、ヒストン修飾の変化や転写因子との結合性の変化を通して遺伝子の転写制御に重要な役割を果たしていることから、がん研究においても注目されている。しかし、放射線被ばくとCpGアイランドのメチル化がどの様に関係しているかは不明な点が多い。また、どのようなepigeneticな変化が細胞の放射線感受性に影響を及ぼすのかについても知られていない。本研究では、長期放射線被ばくにより、どのような遺伝子のメチル化状態が変化するか、細胞の放射線耐性にCpGアイランドのメチル化が関与しているのか否かを調べるために、ゲノムワイドなメチル化の変化した領域の同定を行った。 [材料と方法] ヒト肝がん由来のHepG2細胞と、長期に亘りX線照射して樹立した、3種の亜株細胞を用いた。また、放射線耐性細胞として、2Gy/dayのX線を照射し続けても死滅しない、HepG2-8960-R細胞を用いた。ゲノムDNAでメチル化が変化した領域の単離は、methylation sensitive arbitrarily primed PCR (MSAP-PCR)法により行った。 [結果と考察] HepG2細胞と比較して、長期被ばく細胞株にメチル化に変化の見られた17のゲノム領域を同定した。このうち、4領域はCpGアイランドであった。また、2領域はカリウムイオンチャネルに関連する部位であった。低線量の放射線照射を受けた細胞では、カリウムイオンチャネルの活性が変化することから、本研究で用いたAP-PCR法は放射線によるメチル化の変化によって有意に発現変化する遺伝子を探索するために有用であることが示唆された。現在、メチル化の変化と遺伝子発現の相関を検討中である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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