抄録
成熟Bリンパ球表面に発現するCD180は、in vitroにおいてリンパ球の放射線誘発アポトーシスを抑制する分子として発見され、Toll様レセプタ-4(TLR4)と同様にリポ多糖類(LPS)をリガンドとし、TLR-4のシグナリングを負に制御するレセプターとして報告されている。しかし、CD180の作用機序に関しては不明な点が多い。他方、Bリンパ球にはCD19-CD23などの特異的表面分子が存在し、CD19はB細胞受容体(BCR)補助分子としてBCRからの抗原刺激シグナルを増強し、CD22はシグナルを負に制御する分子として知られている。 今回我々は、CD180分子とアポトーシス細胞の放射線照射による発現変化を解析し、リンパ球の放射線抵抗性におけるCD180の関与を検討した。さらに、B細胞関連分子であるCD19とCD22について、それらの発現性と放射線誘発リンパ球アポトーシスとの関係を解析した。 7~10週齢のBALB/c♀マウスに4 GyX線全身照射後脾臓を摘出し、放射線誘発リンパ球アポトーシスの発現はTUNEL法で、CD180、CD19とCD22の発現変化については、AMeX固定パラフィン包埋切片の免疫組織化学染色とフローサイトメトリーを用いて解析した。その結果、X線照射前後におけるBリンパ球のCD19とCD22の発現変化はほとんどみられなかったが、CD180分子は、照射前と照射6時間後、3時間後と6時間後で有意に発現が増加した。さらにCD180とTUNELの二重染色の結果から、照射6時間後のCD180陽性細胞群のアポトーシス発現に比してCD180陰性細胞群のアポトーシス発現は有意の上昇がみられた。これらのことから、CD180発現B細胞はCD19およびCD22陽性細胞とは異なり、in vivoで放射線誘発アポトーシスに抵抗性であることが示唆された。