日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CP-116
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放射線応答とシグナル伝達
MCF-7細胞におけるカスパーゼ3過剰発現によるX線誘導アポトーシスの増強効果
*女池 俊介小倉 亜希浅沼 武敏桑原 幹典稲波 修
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抄録

【目的】ヒト乳がん由来MCF-7細胞株は、カスパーゼのサブファミリーであるカスパーゼ3を欠損しており、放射線に対して強い抵抗性を示す。カスパーゼはアポトーシスを起こす上で重要な因子であることが知られており、この蛋白質の欠損がMCF-7細胞での放射線抵抗性と強くかかわっていると考えられる。本研究において我々は、カスパーゼ3を過剰発現させたMCF-7細胞においてX線誘導アポトーシスが増強されるかどうかを検討し、有意なアポトーシス増強効果を見出した。さらにはそのアポトーシス誘導での他のカスパーゼファミリーの関与、ミトコンドリア経路ならびにTNFファミリー受容体経路の役割を明らかにすることを試みた。
【方法】カスパーゼ3遺伝子を組み込んだ哺乳類細胞発現ベクターを作製した。MCF-7細胞にトランスフェクションし、細胞内にカスパーゼ3を過剰発現させた。X線照射後PI染色により蛍光顕微鏡でアポトーシス細胞を計測した。各種特異抗体を用いたウエスタンブロット法によりアポトーシス関連因子の発現を測定した。
【結果】カスパーゼ3抗体を用いたウエスタンブロット法で高い発現効率が確認された。アポトーシスの割合はカスパーゼ3発現細胞においては非発現細胞とほぼ同じであった。しかし、この細胞にX線を照射すると、有意なアポトーシスの増感がみられた。一方、非発現細胞ではX線によるアポトーシスの誘導は見られなかった。このことからMCF-7細胞の放射線抵抗性にはカスパーゼ3が重要な役割を担っていると示唆される。また、カスパーゼ3の上流に位置するカスパーゼ8(Ac-IETD-CHO)ならびにカスパーゼ9(Ac-LETD-CHO)の特異的阻害剤を加えると、このカスパーゼ3過剰発現細胞におけるX線誘導アポトーシス増強効果がAc-LETD-CHOのみならずAc-IETD-CHOでも阻害されることが見出された。これはアポトーシス誘導にミトコンドリア経路のみならずTNFα経路も関与する現象であることを示している。

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© 2007 日本放射線影響学会
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