日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: EP-143
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放射線効果の修飾因子
水溶性ビタミンE誘導体tocopherol monoglucoside(TMG)の放射線防護効果
*上野 恵美安西 和紀稲野 宏志小野田 眞伊古田 暢夫村瀬 博宣鍵谷 勤
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抄録
【目的】水溶性ビタミンE誘導体の1種であるtocopherol monoglucoside(TMG)はクロマン骨格とグルコースが結合した構造を有する。本学会第47回大会において、マウスへTMGを照射直前または直後に腹腔内投与を行った結果、30日生存率が非投与群と比較して有意に高くなることを報告した。今回、TMGが皮下投与でも効果があるかどうかを、マウスの30日生存率から調べた。さらにTMGの放射線防護作用をラット乳腺腫瘍発生防護の観点からも評価した。 【方法】C3H/HeSlc系10週齢雄マウスに、X線を7.0 Gy(線量率約0.5 Gy/min)全身照射直後にTMGを皮下投与(650 mg/Kg BW)して、マウスの30日生存率を観察した。また、授乳終了直後(出産21日後)のWistar/MsNrs系雌ラットにX線1.5 Gy(線量率約0.3 Gy/min)を全身照射し、照射1ヶ月後よりプロモーターとしてdiethylstilbestrol(DES)を皮下に埋めこみ、徐放的に投与して乳腺腫瘍の発生を15ヶ月間観察した。TMG(600 mg/Kg BW)はX線照射直後に腹腔内投与した。 【結果】X線照射直後にTMGを皮下投与したマウスの30日生存率は80.0 %で、非投与群の26.7 %と比較して有意に生存率が高くなった。この結果は腹腔内投与の結果と同様であり、TMGは皮下投与でも有効であることが明らかになった。授乳終了直後のラットにX線を全身照射し、DESを投与すると乳腺腫瘍の発生率は、非照射コントロール0 %に比べて、81.8 %と大きく上昇するが、照射直後にTMGを腹腔内投与すると乳腺腫瘍の発生率は59.0 %と有意に減少した。TMGはX線照射による乳腺腫瘍を低減化する働きを有することが示唆された。
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© 2007 日本放射線影響学会
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