日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: EP-144
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放射線効果の修飾因子
アスコルビン酸による放射線防護効果
*藤井 義大加藤 宝光窪田 宜夫藤森 亮上野 昭子岡安 隆一
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抄録
[目的]一般に言われている放射線防護剤(システイン、システアミン、アミフォスチンなど)は、放射線照射前に処理することによってその効果を確認することができるが、最近の研究で、長寿命ラジカルを吸収するアスコルビン酸を放射線照射後に投与することで、突然変異率が下がるという報告がなされた。そこで、本研究では、細胞死及びDNA二本鎖切断に対するアスコルビン酸の防護効果について研究することを目的とした。
[結果]コロニーフォーメーションアッセイ、γH2AXの免疫染色のデータとPCC(未成熟染色体凝縮法)による染色体の損傷のデータより、アスコルビン酸をX線照射後に投与すると生存率が上昇し、DNAとG0期の染色体に対するダメージの量が減少していることが分かった。
[考察]私たちの研究で使用したアスコルビン酸は照射前だけではなく照射後に投与しても放射線防護効果が現れることが重要である。これは、アスコルビン酸は、一般的なフリーラジカルとは違うLong Lived Radicals(長寿命ラジカル)をスカベンジしているか、もしくはPLDRを促進しているからではないかと考えられる。しかし、その詳しいメカニズムはまだ明らかではない。また、一般的によく認知されている物質で副作用も少ないと考えられるので、この研究をもとに放射線治療の際の正常組織の防護、緊急被曝時の応急処置、宇宙飛行士の防護などさらなる発展が期待できる。また、重粒子線でも実験中である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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