抄録
いくつかのfibroblast growth factor (FGF)は、生体での放射線障害の軽減、改善に効果があることが知られているが、FGF12に関しては報告がない。本研究では、FGF12が、ヒト肥満細胞株(HMC-1)において発現していることを初めて見出した。そして、FGF12をHMC-1細胞において過剰発現すると、放射線誘導性アポトーシスが増加し、siRNAによってFGF12発現抑制すると減少した。一方、MAPK scaffold protein islet brain 2 (IB2)は、FGF12と結合することが報告されている。このIB2もHMC-1細胞で発現し、それ自身で放射線誘導性アポトーシスを抑制したが、FGF12のアポトーシス抑制効果に影響を及ぼさなかった。FGF12-IB2結合体は、p38 MAPKシグナリングに関与していると考えられているが、p38 MAPKインヒビターであるSB203580の処理によっても、FGF12強制発現によるアポトーシス抑制効果を阻止できなかった。ところが、MEK/ERKインヒビターである PD98059は、HMC-1にてアポトーシスを著明に増加させたが、FGF12はその増加を強力に抑制した。さらに、このFGF12は、マウス骨髄及び胎児皮膚由来の培養マスト細胞でも、発現が確認された。以上の所見より、FGF12がマスト細胞においてIB2の関与なしに、放射線誘導性アポトーシスを抑制していることが示唆された。