抄録
高線量率放射線によって誘発される突然変異が体組織幹細胞に蓄積するか否かを明らかにするため、Dlb-1 座のヘテロマウス(Dlb-1b/Dlb-1a) に2—3週間の間隔で線量率50 cGy/minX線40 cGyを10—58週齢まで反復照射した。総線量0.4, 2, 4, 6および8 Gy照射後2週間の時点で対照と被照射マウスの小腸を採取し、、Dlb-1 突然変異アッセイに供した。このアッセイにおいて小腸幹細胞のDlb-1b 遺伝子の突然変異を絨毛表面で変異クローンとして検出した。絨毛10000あたりの変異クローンの数(F )は照射回数に応じてほぼ直線的に増加した。同様に対照群のF 値も週齢に直線比例して増加した。対照F 値で補正した線量効果関係から、変異クローン誘発率(10-4 villi·Gy-1)を4.35±0.33と推定した。この値は483日間低線量率ガンマ線を連続照射して得た誘発率の約5倍である。これらの結果は高線量率放射線による突然変異は、低線量率放射線照射の場合と同様に、体組織幹細胞に蓄積することを示唆する。