日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: GO-054
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実験治療と治療生物学
マウス線維肉腫と皮膚に対する放射光マイクロスリットビームの照射効果
*武藤 光伸大野 由美子古澤 佳也小山田 敏文鈴木 雅雄八木 直人小池 幸子鵜澤 玲子柿崎 竹彦和田 成一取越 正己伊藤 伸彦
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抄録
【背景】<BR/>  薄い平面状放射光X線を多層スリット状に照射するmicrobeam radiation(MR)は、新しいがん治療法として期待されており、MRの腫瘍や正常組織に対する影響の解明が試みられている。<BR/> 【目的】<BR/>  マウス線維肉腫(NFSa)に対してMRを施し、腫瘍治療効果と正常組織の耐容線量について検討する。<BR/> 【材料と方法】<BR/>  実験は大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL28B2で行った。ビームラインに輸送される白色X線を175 µm厚のタングステンと25 µm厚のカプトンフィルムの多層スリットコリメータに通過させて、多層の薄いスリット状のビームを形成した。照射8日前にNFSaをC3Hマウスの後肢に移植した。一部のマウスは照射部位を剃毛し、皮膚反応を観察した。なお、皮膚の評価はSkin Reaction Scoreに基づいて行った。<BR/> 【結果】<BR/>  腫瘍体積が1 cm3に達するまでの日数は、対照群に比べ、MRで有意に延長した。他方、スリットを通さないbroadbeam radiation(BR)では、組織に対する吸収線量が同一の場合でもMRよりさらに増殖抑制効果が強かった。<BR/>  皮膚に対する影響は、約200 Gyの照射において、MR後10日目には、BRよりもScoreが高くなったが、14日目以降にはBRよりもScoreが低くなる傾向が認められた。<BR/> 【考察】<BR/>  同等の増殖抑制効果を持つMRとBRであっても、MRでは実際の照射面積はBRの1/8と少なく、かつビーム幅も極めて狭いことから細胞の補填効果などで細胞の修復が早くなる。一方、BRでは照射面積が大きく、正常組織も多くの障害を受けることから皮膚の治癒も遅くなると考えられた。
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© 2007 日本放射線影響学会
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