抄録
【目的】γ線及び原子炉中性子線照射と比べた加速炭素イオン線照射に対する固形腫瘍内休止期及び全腫瘍細胞の反応を解析する。
【材料・方法】担SCCVII腫瘍マウスに、6cmSOBP(拡大ブラッグピーク)のさまざまな深さで、LET(線エネルギー付与)=74,50,43,18 keV/μmの290MeV/u加速炭素イオン線を約1.0Gy/分または約35mGy/分で照射した。比較として、約2.5Gy/分または約35mGy/分でγ線を、約36mGy/分で原子炉熱外中性子線または熱中性子線を照射した。照射直後と12時間後に、細胞分裂死と密接に関連する小核出現頻度(MNfr)とBrdUの連続投与による休止期(Q)腫瘍細胞の同定とを結合した選択的Q腫瘍細胞反応検出法を用いて、腫瘍内Q細胞と全(P+Q)腫瘍細胞への殺腫瘍細胞効果をMNfrと腫瘍細胞生存率で評価した。
【結果】いずれの条件下でもQ腫瘍細胞は(P+Q)細胞よりも低い感受性を示し、γ線照射下で認められる両細胞間の感受性の大きな差は、原子炉中性子線照射または加速炭素イオン線、特に高LETを有する炭素イオン線照射によって顕著に縮小された。γ線照射下においてQ腫瘍細胞により顕著に認められるPLDRや照射線量率低下による感受性の低下は、加速炭素イオン線、特に高LETを有する炭素イオン線照射によって効率的に押さえられた。減弱させた線量率照射下では、高LETを有する加速炭素イオン線照射に対する感受性は、原子炉中性子線照射下とほぼ同様であった。
【結論】Q細胞をも含んだ腫瘍全体としての殺腫瘍細胞効果から見て、加速炭素イオン線、特に高LETを有する炭素イオン線照射は、精緻な線量分布と共に、腫瘍内不均一性に起因する腫瘍細胞の不均一性な感受性の抑制に非常に有効である。