日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: HO-059
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被ばく影響とその評価
結腸の詳細部位別にみたがん罹患の放射線関連リスク
*西 信雄杉山 裕美坂田 律船本 幸代古川 恭治清水 由紀子早田 みどり陶山 昭彦笠置 文善児玉 和紀
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抄録
【目的】結腸と直腸は隣接した臓器で、両部位ともがんの主要な組織型は腺癌である。しかし、放射線影響研究所が長期の追跡調査を行っている寿命調査集団では、がん罹患に関して統計学的に有意な放射線のリスクは結腸にしか認められていない。本研究は、寿命調査集団において結腸の詳細部位別に放射線のリスクを明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】対象を1958年時点でがんの既往がなく、個人線量(DS02)が推定されている寿命調査集団の105,427人とし、1998年まで追跡した。がんの罹患は、広島市・広島県、長崎県のがん登録により把握した。粘膜がんは分析から除外した。結腸は近位結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸)と遠位結腸(下行結腸、S状結腸)の2つに区分した。放射線に関連した過剰相対リスクは、ポアソン回帰モデルにより都市、性別、到達年齢、出生年、被曝場所で補正して求めた。
【結果と考察】結腸がん1,196例(近位550例、遠位646例)が把握された。近位と遠位の結腸がんの過剰相対リスク(到達年齢70歳において1Gyあたり)は、それぞれ男性で0.35と0.64、女性で0.39と0.24であった。近位結腸をさらに2つに分けると、1)盲腸、上行結腸(394例)と2)横行結腸(156例)の過剰相対リスク(到達年齢70歳において1Gyあたり)は、それぞれ男性で0.00と0.87、女性で0.01と1.21であった。上記のいずれの過剰相対リスクも統計学的に有意ではなかったが、がん罹患における放射線のリスクは盲腸、上行結腸で最も低いことが示唆された。
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© 2007 日本放射線影響学会
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