日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: HP-249
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被ばく影響とその評価
間葉系幹細胞の造血支持能を利用した放射線曝露造血幹細胞からの造血再生
*林 直樹高橋 賢次柏倉 幾郎
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抄録
【目的】自己複製能と多分化能を兼ね備えた高い再生能を有する造血幹細胞はリンパ球系と骨髄系に分化し,これらはさらに各前駆細胞を経て最終的に機能を持つ成熟血液細胞へと分化する.この過程は,これらを取り巻くストローマ細胞群により構築される造血微小環境や生理活性因子であるサイトカインによる複雑なネットワークによって制御されている.本研究では,ヒト臍帯血由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell : MSC)の造血支持能を利用して,放射線曝露した臍帯血由来造血幹細胞の再生の可能性について検討した. 【方法】インフォームド・コンセントを得た臍帯血から磁気細胞分離システムを用いてCD34+細胞を高度に分離精製した.分離の際に排出された有核細胞を,FGF-2を含む10%ウシ胎児血清‐DMEM培地を用い,シャーレに吸着し,増殖してきた細胞をMSCとした.得られた細胞はCD73+,CD105+及びCD45-であり,MSCに特徴的な抗原の発現が確認された.IL-3, SCF及びTPO存在下,MSCとX線2 Gy照射CD34+細胞との共培養を行った.対照には非照射CD34+細胞を用い,またMSC(-)の条件下でも培養を行った.培養後,生死判定はトリパンブルー法で行い,細胞表面発現抗原の解析は,フローサイトメトリー法で行った.造血前駆細胞はメチルセルロース法もしくはプラズマクロット法で評価した. 【結果・考察】MSCとCD34+細胞との共培養の結果,細胞増殖において照射及び非照射CD34+細胞のいずれもMSC(+)及びMSC(-)の間で有意な差は認められなかった.一方,培養後回収された細胞に含まれる造血前駆細胞では,特に白血球系前駆細胞であるCFU-GMの有意な増加がMSCと照射CD34+細胞との共培養において観察された.従って,放射線曝露造血幹細胞からの造血再生におけるMSCの有効性が示唆された.
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© 2007 日本放射線影響学会
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