日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: HP-250
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被ばく影響とその評価
サイトカイン複合培養による重粒子線曝露造血幹/前駆細胞からの巨核球・血小板産生の回復
*高橋 賢次門前 暁吉野 浩教阿部 由直江口-笠井 清美柏倉 幾郎
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抄録

【目的】我々は,これまで血小板産生を司る巨核球前駆細胞(colony-forming unit megakaryocyte, CFU-Meg)の放射線感受性を解析し,重粒子線の感受性は極めて高く,X線で有効であったサイトカインではほとんど回復させることが困難であることを明らかにした(第49回大会).本研究では,有効なサイトカインの組合せを複合的に用いた生体外増幅において,重粒子線に曝露された造血前駆細胞から効率的に巨核球・血小板産生を誘導できないかどうかを検討した.【方法】インフォームドコンセントを得た臍帯血から磁気細胞分離システムを用いて造血前駆細胞であるCD34+細胞を高度に分離精製した.細胞浮遊液に対し,LET 50 KeV/μmで炭素線を照射(2 Gy)後,ヒト遺伝子組換サイトカインを用い,液体培養法による細胞数の増加と分化をフローサイトメトリー法で解析した.サイトカインは,防護効果が高いスロンボポエチン(TPO),interleukin-3 (IL-3)及びstem cell factor (SCF)の組合せと,巨核球・血小板の分化誘導効率が高いTPOとIL-3の組合せを複合的に用いた.【結果・考察】炭素線照射直後からTPO + IL-3 + SCFの組合せで培養を開始し、1日後及び7日後にTPO + IL-3の組合せに換えて巨核球・血小板誘導を行った.培養14日目および21日目に解析を行ったところ照射1日後にTPO + IL-3のサイトカインの組合せに交換すると巨核球・血小板分化は促進するものの,細胞数の回復には至らなかった.照射7日後にTPO + IL-3のサイトカインの組合せに交換すると巨核球・血小板分化の効率が低く,巨核球数と血小板数ではTPO + IL-3 + SCFの組合せでのみ培養を続けたときとほとんど差が見られなかった.重粒子線を曝露された造血前駆細胞の回復には,更なるサイトカインや血球増幅作用のある化合物などの必要性が示唆された.

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© 2007 日本放射線影響学会
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