日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: JP-175
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放射線物理・化学・技術
パルスラジオリシス法によるDNA鎖上のアニオンラジカルのダイナミクス
*山上 隆平小林 一雄田川 精一
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抄録
DNAは放射線照射によりアニオンおよびカチオンが生じ、それらは遺伝子損傷にとって重要な過程の一つとして考えられている。DNA中に生じるカチオンに関して、これまでに多くの研究が行われているのに対して、アニオンの挙動に関してはよくわかっていない。4種類の塩基A, T, G ,Cの中でT, Cの還元電位はG, Aと比べて低く電子輸送の担い手になると考えられ、DNA上に生成したアニオンラジカルは、T, Cに移動することが提唱されている。生成したC, Tアニオンラジカルはプロトンが付加することで中性ラジカルを生じ、電子移動が阻害されると考えられている。一方、DNA中で相補的塩基対を形成しているC, Tのアニオンラジカルとプロトンとの反応の挙動は全く不明である。そこで本研究では電子線パルスラジオリシス法によりdA, dT, dG, dCの4種類のヌクレオチドとオリゴDNAのアニオンラジカルのナノ秒の光過渡吸収を測定した。各デオキシヌクレオチドは水和電子と反応しアニオンラジカルを生じ、さらにプロトンが付加し中性のラジカルが生成したdTアニオンラジカルのpKaの値を7.0と求められ、dTアニオンラジカルとプロトンとの結合反応は2.4×1010 M-1s-1であった。一方、dCにおいてはこのような中間体は観測されず、dCアニオンラジカルは生成後直ちにプロトンが付加していることが確認された。DNAの測定においては、CまたはTのアニオンラジカルに由来するスペクトルが得られると予想されたが、スペクトルは4種類の塩基のアニオンラジカルのスペクトルとは異なるものであることがわかった。
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© 2007 日本放射線影響学会
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