抄録
重粒子線は、X線やガンマ線などの低LET放射線に比べて、線量分布の集中性に優れ、生物効果も高いことから、がん治療に利用されている。がん遺伝子であるBcl-2を高発現するがん細胞は、低LET放射線に対して抵抗性を示すが、その放射線感受性は、Bcl-2の阻害剤であるHA14-1の併用により増強されることが報告されている。本研究では、Bcl-2を高発現するがん細胞に対するHA14-1の重粒子線増感効果を検討した。ヒト子宮頸部がん由来のHeLa細胞にネオマイシン耐性遺伝子のみを導入したHeLa/neo細胞に比べ、Bcl-2を過剰発現させたHeLa/bcl-2は、コバルト60ガンマ線に抵抗性を示したが、LET=108 keV/μmの炭素線に対する感受性は両細胞で一致した。さらに、HA14-1を照射前に1時間処理すると、両細胞の炭素線感受性が増強され、HeLa/bcl-2細胞よりもHeLa/neo細胞により強い増感効果があるとの予備的な結果が得られた。この結果は、HA14-1がBcl-2の発現量の低い細胞に対して、より重粒子線感受性を増強する可能性を示唆している。