抄録
背景
哺乳動物細胞を用いた研究などからセラミドが脂質性シグナルとしてアポトーシスの誘発に関与することが示されているが、セラミド産生経路の活性化機構や制御因子は明らかにされていない。我々はショウジョウバエをモデルにアポトーシスにおけるセラミドの産生経路について検討したので報告する。
方法
セラミドはSchneider line 2 (SL2)株からBligh & Dyer法により脂質を抽出しリン酸化標識した後、薄層クロマトグラフィーで分離し、セラミド1-リン酸を測定することにより定量した。カスパーゼ3/7活性は細胞破砕液にDEVD-ルシフェリンとルシフェラーゼを含む反応液を混ぜ合わせた後に発光を測定した。RNA interference (RNAi) 実験はSL2株に500~700ntの二本鎖RNAを加え3日間25℃で培養した後、紫外線を照射しさらに25℃で5時間培養後にカスパーゼ3/7活性を測定した。
結果
UV-Cを照射したSL2株から経時的に脂質を抽出してセラミドの定量を行った。セラミド濃度は照射5時間後には照射前の約3倍程度まで上昇した。また、C2セラミドをSL2株に添加したところ、カスパーゼ3/7活性の上昇が認められた。さらにセラミドを分解するセラミダーゼの遺伝子をSL2株に導入して誘導的に発現させたところ6割程度までカスパーゼ3/7活性の低下が見られた。
RNAi実験では中性スフィンゴミエリナーゼ相同遺伝子の二本鎖RNAを細胞に添加したものでカスパーゼ3/7活性の低下が見られた。酸性スフィンゴミエリナーゼ相同遺伝子、セラミド合成酵素遺伝子、スフィンゴ脂質?4不飽和化酵素遺伝子の二本鎖RNAを添加したものでは明らかな低下は見られなかった。
結論
SL2株においてもセラミドがアポトーシスの重要な因子であり、中性スフィンゴミエリナーゼ相同遺伝子がその産生に関与していることが示唆された。