日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W2-4
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環境変異原によるDNA二重鎖切断は細胞死の過程か防御機構か
G0期におけるヌクレオチド除去修復に依存したH2AXリン酸化
*松永 司
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抄録
ヒストンH2AXのC末端付近にあるSer139は、電離放射線等によって生じるDNA二重鎖切断生成に伴って、ATMやDNA-PKcsにより迅速にリン酸化される。一方、紫外線照射やヒドロキシウレア処理でもS期細胞でH2AXのリン酸化が見られ、DNA複製フォーク停止に伴う一本鎖DNA領域生成が引き金となりATRによりリン酸化されると考えられている。最近、我々は、G0期に同調したヒト線維芽細胞でも紫外線照射後にH2AXがリン酸化されることを見出し、この反応がヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)に依存することを明らかにした。さらに、その原因として、G0期ではNERの後期過程で働く修復合成因子の細胞内レベルが著しく低下し、一本鎖DNAギャップが蓄積する可能性を示唆した(Matsumoto et al., J. Cell Sci. 120, 1104-1112, 2007)。今回は、このNERに依存したH2AXリン酸化が生体内に存在するG0期細胞でも生じるのかを中心に検討した。
まず、G0期に同調されたヒト線維芽細胞にNERの基質となるDNA損傷を誘起するアセチルアミノフルオレンやシスプラチンを処理したところ、NERの正常な細胞においてH2AXのリン酸化が見られることを確認した。一方、マウスの胸腺およびリンパ節よりT細胞を分離して紫外線を照射したところ、修復合成因子の細胞内レベルが著しく低下しているリンパ節由来T細胞において、H2AXのリン酸化が検出された。また、このリン酸化はxpaノックアウトマウス(大阪大・田中亀代次博士より供与)から分離した末梢T細胞では見られず、この反応もNERに依存していることが明らかになった。現在、上記の化学物質を処理したマウス内のG0期細胞でH2AXのリン酸化が生じているか検討しており、合わせて報告する予定である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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