日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W2-3
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環境変異原によるDNA二重鎖切断は細胞死の過程か防御機構か
DNA鎖間架橋修復におけるDNA二本鎖切断の役割
*槌田 謙松田 善行小松 賢志
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抄録

DNA鎖間架橋 (Interstrand cross-links : ICLs)はDNA二本鎖がDNA架橋剤によって架橋された構造のDNA損傷であり,転写,複製,組み換えを阻害する。ICLによって複製フォークの進行が阻害されるとMus81,XPF等のエンドヌクレアーゼによってICL部位が切断され,DNA二重鎖切断(double strand break : DSB)が生じることが報告されているがICL修復の詳細は不明である。我々は真核生物のICL修復機構の解明を目的にICLの高感度定量法(Psoralen-PEO-biotin excision assay: PPBE法)を開発した。PPBE法はDNAに結合したDNA架橋剤,ソラレンを直接検出することが可能であることからICLの除去反応を測定するのに適した手法である。PPBE法を用いた解析から正常細胞は細胞当たり2500個のICLを24, 48時間後でそれぞれ77, 93%除去することが明らかになった。この除去反応はDNA複製の阻害によって低下することからICL修復はDNA複製時に行われることが示された。また,DNA架橋剤感受性を示すナイミーヘン症候群細胞,色素性乾皮症F相補性群細胞,ファンコニ貧血細胞であるFA-G,-A相補性群細胞では正常細胞と比べICL除去速度に有意な低下が見られた。一方,FA-D2相補性群細胞ではICL除去速度は正常細胞とほぼ同じであったことからFA-D2タンパク質はICL除去には関与しないことが示された。相同組換え(HR)関連遺伝子欠損細胞はDNA架橋剤感受性を示すがICL除去速度は正常であったことからHRはICL除去後の修復に関わることが示唆された。DNA架橋剤感受性細胞は多く存在するが,ICL部位の除去の異常と,ICL除去によって生じたDSBの修復の異常に分類できることが本研究で明らかになった。

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© 2007 日本放射線影響学会
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