日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W5-355
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低線量、低線量率放射線の生物影響の分子メカニズム
低線量率ガンマ線連続照射マウス脾細胞染色体異常の線量・線量率効果
*田中 公夫香田 淳豊川 拓応一戸 一晃小木曽 洋一
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抄録
低線量率放射線の長期被ばくにおいて染色体異常頻度と集積線量や線量率との関係を知ることは、発がん等健康影響のリスク評価上重要であるが、極低線量被ばく集団の調査でこれらの関係を観察することはきわめて困難であるため、作業環境よりやや高いレベルの低線量率放射線連続照射を行ったマウスの脾臓リンパ球に生じる染色体異常頻度を観察し、その結果からヒトにおける極低線量率放射線長期被ばくの染色体に及ぼす影響を推定する必要がある。C3H/He Jclメスマウスを8週齢からSPF条件下で低線量率137Csガンマ線連続照射 [1 mGy/ 22hr/day(0.045 mGy/hr)で最大 615 mGy と20 mGy/22hr/ day (18.2 mGy/hr)で最大8,000 mGy]を行った。比較のため高線量率(0.89 Gy/分)の照射も行なった。非照射対照群は照射前8週齢及び、照射終了時の同日齢非照射マウスとした。照射終了後、マウスの脾臓細胞に、LPS、ConA、2-MEを混合添加して、48時間培養し、FISH法とM-FISH法により二動原体異常頻度と転座型異常を調べた。転座型異常の解析は20 mGy/22hr/day の照射においてのみ終了している。20 mGy/ 22hr/dayの低線量率連続照射では二動原体異常頻度、転座型異常頻度は、照射時間が長くなる(集積線量が増加する)につれてほぼ直線的に増え、8 Gyでは複雑な異常やクローンが観察され、二動原体異常頻度は、1 mGy/22hrの低線量率の照射よりやや高かった。二動原体異常と転座型異常頻度は加齢によりごくわずか増加した。20 mGy/22hr/dayの低線量率と高線量率照射で生じた二動原体異常頻度の相関曲線および直線を求め、その式の傾きの比から線量・線量率効果係数(DDREF)を得た。線量域ごとに200 mGyでの値を計算すると下限が1.9で上限が3.6となった。観察対象とする線量域、線量率ごとに値がかなり変動することがわかった。これらの結果は低線量放射線のリスク評価上重要である。本研究は青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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