日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W7-3
会議情報

植物のDNA修復系からみた放射線生物影響
植物における相同組換えシステム
*土岐 精一阿部 清美中山 繁樹雑賀 啓明遠藤 真咲刑部 敬史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
相同組換えは、DNAの2重鎖切断の修復と、減数分裂時の組換えを担うことから、植物遺伝学・植物育種学においては非常に重要な研究テーマである。しかしながら、相同組換えに関与する個々の役者が単離されていなかった為、その機構解明は酵母やヒトと比較して立ち遅れていた。ところが近年のシロイヌナズナやイネのゲノム解析の進展により、植物において相同組換えに関わる因子が、遺伝子レベルで次々と明らかになった。またタギングラインの整備により、逆遺伝学的手法による機能解析も進んできた。さらに遺伝学的手法により新規の相同組換え因子も単離されてきた。 これまで得られた知見をまとめると、
・植物は、ヒトが持つ組換え修復の役者を揃えている。即ちシロイヌナズナにおいては、Rad51, DMC1, Rad54,5つのRad51パラログ, Rad50, Mre11, Nbs1のカウンターパートを各1種ずつ持つ。また3種類のSpo11ホモログ、2種類のBRCA2ホモログを持つ。一方、Rad52のカウンターパートは見つかっていない。
・遺伝子破壊株の解析より、上記の因子は栄養成長期のDNA修復には関わるが、生育には必須でなく、破壊株は減数分裂期までは正常に生育する。
・高等植物にのみに見つかっている組換え因子が存在する。
・高等植物の相同組換えシステムの誘導機構は、この過程に関わる役者Chk1, Chk2, Cdc25等のカウンターパートが見つからない事もあり、殆ど解っていない。しかしながら、Rad51の転写はDNA損傷処理によって100倍以上に上昇し、また、この反応はATMの破壊株では起こらないことから、転写レベルの制御の重要性が示唆されている。
 本発表では演者のこれまでの研究を交えながら、植物の相同組換えシステムについて、他の生物と比較しながら説明したい。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top