日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W7-4
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植物のDNA修復系からみた放射線生物影響
二つの光回復酵素 ~それぞれの機能特性と役割について~
*人見 研一山元 淳平岩井 成憲GETZOFF Elizabeth D.
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抄録

紫外線は細胞内物質を励起し、様々な化学反応を引き起こす。遺伝子の本体である核酸に対する化学反応は生命活動を行う上で障害となるが、生命は進化とともに遺伝毒性を示す紫外線に多様な防御機構を構築してきた。光回復酵素は生命が獲得した光による遺伝子損傷の修復機構の一つであり、紫外線照射によってできた遺伝子上の損傷を青色光を使って修復する。光回復酵素あるいは光回復酵素様のタンパク質をコードする遺伝子は多岐にわたる生物種において見いだされている。特筆すべきことに、大腸菌をはじめとした単細胞生物が一つの光回復酵素活性(クラスI CPD)を持つのに対して、高等生物の多くが基質特異性の全く異なる二つの光回復酵素活性(6-4とクラスII CPD)を併せ持つ。これまで光回復酵素の研究は単細胞生物由来のもの(クラスI CPD)について行われ、それにより得られた数多くの知見から多細胞生物由来の光回復酵素(6-4とクラスII CPD)の機能特性についても考察されてきた。しかしながら、ただ単純に下等生物における研究をなぞらえるだけでは、高等生物における二つの光回復酵素の機能分化や相互作用の理解にはつながらない。我々は高等生物由来の二つの光回復酵素について、NMR、結晶解析、構造モデリング、化学合成した修飾核酸、並びに分子生物学的手法を用い、基質特異性と修復の作用機序解明に取り組んできた。本ワークショップにおいては、これまでに得られた知見をもとに高等生物における光回復酵素のそれぞれの機能特性について紹介し、遺伝子修復のネットワークにおける二つの光回復酵素の潜在的な役割にふれ、紫外線による遺伝子損傷の修復の多様性と変異について議論したい。さらに、紫外線影響の研究における今後の課題についても言及したい。

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© 2007 日本放射線影響学会
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