日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W7R-372
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植物のDNA修復系からみた放射線生物影響
太陽紫外線がイネの生育・収量に及ぼす影響に関する野外環境試験
*山岸 朋香寺西 美佳佐藤 雅志日出間 純
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抄録
紫外線UVB量の増加は、イネの生育傷害、収量の減少や玄米の小粒化、さらには玄米タンパク質の増加(食味の低下)を引き起こす(Hidema et al. J. Radiation Res. 2005)。このような、UVB生育傷害の主要因は、UVBによって誘発されるDNA損傷、シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)の蓄積であり、CPDを修復するCPD光回復酵素の活性を増加させることで、UVBによる生育傷害を軽減させることができることを実証してきた。では、現在の太陽光に含まれるUVBはイネの生育・収量にどの程度影響を及ぼしているのか?現在の自然光下で生育しているイネの葉細胞内でのCPD蓄積量を解析した結果、葉細胞内にはCPDが1日を通して3~6/Mb程度存在していた。そこで、現在の太陽光に含まれるUVBがイネの生育に及ぼしている影響を調査することを目的に、コシヒカリと、コシヒカリのCPD光回復酵素が座位する第10染色体のみをコシヒカリよりも酵素活性が低下しているインド型イネカサラスの第10染色体で置き換えた部分置換系統(SL-229 系統)を材料に野外環境試験を行った。なお、カサラスはコシヒカリと比較して、CPD光回復酵素の遺伝子型の違いによってCPD光回復酵素活性が低下しており、SL-229系統はUVB感受を示す。栽培は2006年5~9月にかけて、宮城県大崎市の実験圃場にて行い、生育調査ならびに収量調査を行った。SL-229系統はコシヒカリと比較して、玄米100粒重が約13%低下し、また玄米が小粒化している傾向が認められた。以上の結果から、今日の太陽紫外線もイネの生育に傷害を引き起こしている可能性が示唆された。今年度も引き続き調査を行っている。
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© 2007 日本放射線影響学会
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