日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W7R-373
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植物のDNA修復系からみた放射線生物影響
イネには2つのフォームのCPD光回復酵素が存在する
*寺西 美佳中村 憲太郎熊谷 忠日出間 純
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キーワード: 紫外線, CPD光回復酵素, 植物
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抄録
UVB照射により生じるDNA損傷の代表的なものであるCPD (シクロブタン型ピリミジン二量体) を修復するCPD光回復酵素の活性は、植物のUVB感受性を左右する主要な因子である。CPD光回復酵素は、そのアミノ酸配列の相同性から、クラスIとクラスIIに分類されており、クラスIの解析は、大腸菌を用いて良くなされているが、クラスIIについての知見は乏しい。そこで、クラスII CPD光回復酵素をもつイネの葉から、CPD光回復酵素を精製した。粗酵素液から、硫安分画と2種類のカラムを用いて精製し、さらに、CPDを含むDNAを結合させた磁気ビーズに結合させた後、青色光照射によって遊離するタンパク質を取得した。この画分は、粗酵素液と比較して、CPD光回復活性が約8,100倍に上昇しており、SDS-PAGEを行ったところ、約54kDaと56kDaの2つのタンパク質を含んでいた。これらのタンパク質には、イネCPD光回復酵素に対する抗体が反応すること、TOF-MS解析により、イネCPD光回復酵素にマッチするペプチドが含まれることから、2つともCPD光回復酵素であると考えられた。さらに、イネCPD光回復酵素遺伝子のcDNA配列をイネに導入した過剰発現体では、2つのCPD光回復酵素ともに過剰発現していたことから、2つの酵素は、1つの遺伝子から生じており、翻訳後修飾により異なるフォームをとっているものであると考えられた。一方、イネCPD光回復酵素のcDNA配列をもとに、大腸菌にて発現・精製したタンパク質は、約55kDaのタンパク質のみからなり、イネから精製したCPD光回復酵素と比較して、タンパク質量あたりの活性が低かった。これにより、イネにおいては、大腸菌において発現させた場合には見られないCPD光回復酵素の修飾が起こっており、この修飾が活性に関わっている可能性が考えられるため、現在解析中である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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