日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AP-14
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DNA損傷・修復
高等真核生物におけるDNA-タンパク質クロスリンク損傷の修復機構
*中野 敏彰寺東 宏明井出 博
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抄録
放射線、紫外線、およびある種の変異原物質は、ゲノムに付随するタンパク質を共有結合により不可逆的にトラップし、DNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷を生じる。さらに、DPC損傷は、酸化損傷や紫外線誘発ピリミジンダイマーに比べ極めてかさ高いのが特徴であり、複製・転写装置の進行を強く阻害し細胞に重篤な影響を与えると予想される。ゲノム損傷としてのDPCの存在は、原核および真核生物を通じて古くから知られていたが、その細胞内修復機構については、研究報告がほとんどなく未解明の状態であった。当研究室では、これまでに大腸菌をモデルとしてDPC修復機構の検討を行い、修復には、ヌクレオチド除去修復(NER)と相同組換え(HR)が協調して働き、その関与の仕方は、クロスリンクタンパク質(CLP)のサイズに依存することを明らかにした。しかし、高等真核生物でも同様なDPC修復機構が働くかどうかは明らかにされていない。本研究では、哺乳類培養細胞を用い高等真核生物のDPC修復機構を検討した。モデルDPC基質をHeLa細胞粗抽出物とインキュベートすると、DPCの5’および3’側が切断され、損傷を含む27merDNA断片が除去された。しかし、除去されるCLPの上限サイズは8-10 kDaで、原核生物NERの上限サイズに比べ小さかった。この上限サイズはヒストン(> 12 kDa)等のクロマチン付随タンパク質に比べ小さい。さらに、in vivoにおけるDPC除去活性を検討するため、DPC誘発剤(formaldehyde)で処理した細胞からゲノムDNAを単離し、CLPの除去動態を調べたが、NER野生型細胞とXPA細胞で差は認められなかった。以上のin vitroおよびin vivoの結果から、哺乳類細胞では、NERはDPC修復に寄与しないと予想された。DPC回避に対するHRの関与についても検討を進めており,その結果についても合わせて報告する。
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© 2008 日本放射線影響学会
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