抄録
毛細血管拡張性運動失調症の患者細胞はアポトーシスに抵抗性を示すことから、放射線感受性の原因はDNA二本鎖切断修復の欠損あるいは誤修復の昂進によると思われる。DNA二本鎖切断修復として相同組換え修復とKu蛋白依存性の非相同末端結合、53BP1依存性の非相同末端結合の3種類が知られている。患者で変異しているATMは相同組換えの蛋白と思われているが、非相同末端結合で機能する(Riballo E., Mol Cell, 2004)あるいはI-SceI誘導DNA二本鎖切断では相同組換えに関与しない(Sakamoto S., Oncogne 2007)の報告もあり、その作用機序は依然として不明である。そこで、本研究では、Ku蛋白欠失による非相同末端結合能欠損STEF細胞とATMの選択的阻害剤KU55933、およびRNAiによる53BP1ノックダウン法を用いてATMの3種類の修復経路における役割を解析した。
STEF細胞をKU55933で処理すると、放射線感受性が高くなった。このことは、ATMの不活化は修復能低下を起こすことを示唆している。又、53BP1ノックダウン細胞では生存率が高くなり、相同組換えの昂進がみられた。現在、レポーター遺伝子を用いた相同組換え能測定およびI-SceI誘導DNA二本鎖切断修復について解析を進めている。