抄録
放射線や化学物質など環境因子の生物影響を考える上で、突然変異は重要な位置を占める。分子生物学的解析の進展により、突然変異生成のメカニズム、またそれに関わる遺伝子群について、細胞レベルでその詳細が明らかにされてきている。しかしながら、突然変異は極めてまれな事象である為、個体レベルでの解析、つまり実際の体組織・体細胞の中でどの様な頻度でそれらが生成され、またどの様なタイプの細胞で起こった変異が発がん等個体レベルでの重篤な帰結につながるのか、についての解析は未だほとんどなされていない。本研究は、「突然変異」の個体・組織レベルでの解析系をメダカにおいて確立することを目指している。
突然変異は、その生成過程から自然突然変異と損傷誘発突然変異とに大別される。自然突然変異とは、通常のDNA 複製の過程で複製酵素のエラーによって起こるもので、それらのエラーの多くはミスマッチ修復酵素により取り除かれるが、ある頻度で残存し突然変異として固定されてしまう。
我々はこの自然突然変異の個体レベルでの解析を目指し、ミスマッチ修復酵素遺伝子Msh2,Exo1のメダカ突然変異体をTILLING法(前大会で発表)を用い作製することを試みた。変異体ライブラリーのスクリーニングの結果Msh2で1つ、Exo1で2つのナンセンス変異をもつ変異体を得ることができた。今後これらの変異個体の作成し解析を進めていく。