抄録
イオンビームによる突然変異誘発のメカニズムを分子レベルで解析するために、出芽酵母S. cerevisiae の野性株ならびにDNA修復欠損株を用い、イオンビームによる損傷とDNA修復のメカニズムについて解析を行った。
照射試料として野性株、塩基除去修復による8-oxodGTPの除去活性を失ったogg1 株、およびミスマッチ修復の活性を失ったmsh2株を用いた。原子力機構・イオン照射研究施設(TIARA)のAVFサイクロトロンを用いて加速したカーボンイオン粒子(エネルギー:220 MeV,LET:107 keV/μm)を照射した。続いて最も突然変異の頻度が高かった照射条件を用いて突然変異の誘発を行い、URA3 領域(804bp)についてPCR法を用い増幅させ、変異位置をシーケンス解析によって決定した。
得られた結果から、ogg1 株では主にCG→TAトランスバーションが誘発され、msh2 株では1塩基欠失が主に誘発されることがわかった。これらの変異パターンから、重粒子線照射による突然変異の要因として酸化損傷したヌクレオチドが関与していることが示唆された。