日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AP-26
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DNA損傷・修復
DNA修復因子MRE11における中心体制御の役割
*寒河江 瑠里島田 幹男小林 純也小松 賢志
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キーワード: 中心体, MRE11, ATLD
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抄録
 AT様疾患(ATLD)は、放射線高感受性、染色体不安定性、チェックポイント異常といった特徴を持つ遺伝病である。ATLDの原因遺伝子MRE11はNBS1とRAD50と複合体(MRN複合体)を作り、放射線や他のストレスによって誘導されるDNA二重鎖切断の際の相同組み換え(HR)修復に関与することが知られている。ATLD細胞は染色体不安定性を示すがその理由として、MRE11遺伝子欠損によるDNA修復能破綻が挙げられている。  今回、我々はMRE11が中心体と共局在していることを発見し、MRE11がDNA修復だけでなく、中心体の制御にも関与している可能性を見いだした。中心体とは1組の中心小体と中心体周辺物質からなり、細胞周期の間期において微小管形成中心として細胞内の極性を維持し、M期には双極紡錘体の極を形成する中心器官となる。複製異常や細胞質分裂の失敗によって生じる中心体の過剰状態は多極紡錘体の原因となり、染色体の不等分配を起こす。よって、中心体の数の制御は染色体分配の重要なポイントである。放射線を照射した細胞では中心体の過剰複製が起こるといった現象が報告されている。また、最近ではDNA損傷応答に関わるBRCA1が染色体の維持に重要である事が報告され、他にも多数のDNA修復因子が中心体に局在することがわかってきている。特にDNA損傷応答因子のチェックポイントが中心体制御と何らかの関わりがあると考えられているが、詳細は不明である。  今回、MRE11が中心体と共局在することからMRE11が中心体制御に関与している可能性が示唆されたので、siRNAによるMRE11のノックダウン実験を中心に中心体制御の機構を解析した結果を報告する。
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© 2008 日本放射線影響学会
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