日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BO-3-1
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放射線応答・シグナル伝達
抗酸化酵素の高発現による放射線や活性酸素に対する細胞応答の変動
*細木 彩夏橋口 一成野村 崇治近藤 隆米井 脩治秋山(張) 秋梅
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抄録
生物は酸素を利用して生命維持に必要なエネルギーを得ています。しかしその一方で、酸素代謝の副産物としてスーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素を生じることが知られています。この活性酸素は体内に取り込まれた酸素の代謝過程から発生するといった内的な要因以外にも、外的な要因でも発生します。外的な要因として薬剤、紫外線や放射線などが知られています。発生した活性酸素は体内に侵入してきた細菌から身体を守るなど生命活動の維持に有益に働くことのある反面、細胞に損傷を与えるなど有害にも作用します。そのため細胞はこの活性酸素による損傷を防ぐ防御機構を発達させています。この防御機構は活性酸素を直接的または間接的に除去したり、損傷の受けたDNAを修復するように働いています。活性酸素を除去する機構として、細胞は抗酸化酵素と呼ばれる活性酸素を除去する酵素や低分子化合物を多数持っています。通常、細胞内での活性酸素の生成と除去の間では一定のバランスが保たれています。このため過剰に活性酸素が細胞内で増大した場合、活性酸素除去に関わる酵素の発現が誘導され、発生した過剰の活性酸素を除去します。これは外的な要因で人工的に活性酸素を発生させた場合でも同様です。今回、抗酸化酵素であるsuperoxide dismutaseやglutaredoxinなどをヒトの培養細胞で過剰に発現させた状態で、放射線など外的な要因によって活性酸素を人工的に発生させました。高発現させた活性酸素を除去する抗酸化酵素が、他の抗酸化酵素の協調的に補うように働くのか、または過剰な抗酸化酵素の発現がその働きを阻害するように作用するのか、抗酸化酵素を過剰発現させたことによって、放射線や酸化ストレスへの感受性がどのように変化するのかを調べました。
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© 2008 日本放射線影響学会
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