抄録
p21WAF1は放射線等genotoxic stressに応答して転写誘導され、G1/S arrestに機能している。転写誘導の機構は、ストレスの種類によって多様であるが、電離放射線による誘導においては専らp53依存的であることが知られている。しかし、放射線照射後のp21WAF1遺伝子の転写誘導において、p53以外の転写因子の関与については解析があまり進んでいない。我々はアデノ随伴ウイルスベクターを用いた放射線応答性の高いレポーターベクター系を構築し、ヒト乳がん由来細胞MCF7を用いて0.2-2.0 GyのX線応答に機能する領域を探索した。その結果-1958bp/-1679bp、-1398bp/-1119bpおよび-1118bp/-839pを欠失しているコンストラクトでは顕著にX線応答性が低下していることがわかった。塩基配列を調べたところ、-1958bp/-1679bpにはリピートしたOct-1認識配列(-1798bp/-1792bp、-1760bp/-1754bp)、また-1118bp/-839pには単独のOct-1認識配列(-1003bp/-990bp)が存在していることがわかった。-1398bp/-1119bpにはp53の不完全な認識配列(-1370bp/-1356bp)が存在することは以前から知られていた。次にこれらのサイトを特異的に欠失させたレポーターベクターを構築してMCF-7細胞に導入したところ、放射線応答性は顕著に低下していた。EMSAおよびChIP解析によりOct-1がこれらのサイトに結合することが観察された。また、siRNAを用いてOct-1をノックダウンすると、内在p21WAF1遺伝子転写のbasalな成分と放射線誘導成分がともに抑制された。以上のことから、放射線によるp21WAF1遺伝子の転写制御にp53の他、Oct-1が機能していることが明らかとなった。