日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-11
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放射線応答・シグナル伝達
ヒト末梢血造血前駆細胞の放射線感受性におけるNrf2の応答
*加藤 健吾高橋 賢次門前 暁丸山 敦史伊東 健柏倉 幾郎
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キーワード: Nrf2, 造血前駆細胞, HO-1
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抄録
【目的】生体は紫外線や化学物質などの酸化ストレスに常にさらされている.近年,酸化還元反応の中でも注目を集めているものの1つにNrf2転写因子がある.Nrf2は酸化ストレスに応答して,異物代謝第二相酵素群及び酸化ストレス応答タンパク質の発現を統一的に制御する.本研究では,Nrf2の標的遺伝子のストレス応答タンパク質の1つであるHO-1と,親電子性毒物であるキノンを無毒化するNQO1を指標として,ヒト末梢血造血前駆細胞における放射線応答とNrf2発現の個体差について検討した.
【方法】献血由来バフィーコートを,リンホセパールに重層・遠心後,有核細胞を回収した.この細胞を,遺伝子組換ヒトサイトカイン(G-CSF, GM-CSF, IL-3, SCF, EPO)を含むメチルセルロース培地に懸濁し,0.2 Gy, 0.5 Gy, 2 GyのX線照射後(線量率約0.7 Gy/min),37ºC,5% CO2環境下で14日間培養した.培養後,倒立顕微鏡下で細胞50個以上からなるコロニーを,白血球系, 赤血球系及び混合系前駆細胞にそれぞれ分類して計数した.また,有核細胞から磁気ビーズ法によってCD14+細胞(単球)を分離し,上記と同様の条件で放射線曝露後サイトカイン存在下2時間,4時間,6時間インキュベート後それぞれの細胞からRNAを抽出した. HO-1及びNQO1の測定は,リアルタイムPCRで行った.
【結果・考察】HO-1とNQO1の発現量は,ヒト末梢血有核細胞中の単球でいずれの放射線量及び時間においても有意な相関が得られた.このとき,HO-1の発現量は,0.5 Gy照射における造血前駆細胞の生存率との間に正の相関を示した.一方,HO-1の0.2 Gy, 2 Gy及びNQO1では相関は観察されなかった.このことから, Nrf2発現は,0.5 Gyという低線量における個体の造血前駆細胞の応答の差に依存する可能性が示唆された.
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© 2008 日本放射線影響学会
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