日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: BP-12
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放射線応答・シグナル伝達
放射線照射後のG1チェックポイント維持機構の解明
*早田 知永岡 泰由山内 基弘鈴木 啓司
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キーワード: G1チェックポイント, ATM, p21
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抄録

G1チェックポイントは放射線照射後の細胞において誘導されるG1後期細胞周期停止であり、本研究室および他のグループの研究からその永続性が示唆されている。G1チェックポイントのシグナル伝達経路としてはATM-p21-p53経路が知られているが、本研究ではこのシグナル伝達経路の中にG1チェックポイントを維持するための「シグナル安定化機構」が存在するという仮説を立て、これを立証することを目的とした。 まず、「G1チェックポイントシグナル安定化機構」が存在するかどうかを明らかにするため、照射後、シグナルの最上流のATMを阻害した際にもG1アレストが維持されるかどうかを検討した。G0期に同調した正常ヒト線維芽細胞に4 Gyのγ線を照射後すぐに同調を解除し、p21蛋白質の発現誘導がピークになる照射4時間後からATM阻害剤KU55933(以下KU)を5 M処理し、24時間後に細胞を固定後、Replication Protein A(以下RPA)の蛍光免疫染色により、S期進行細胞の割合を検討した。その結果、RPA陽性細胞は非照射群で41 %、4 Gy照射群で16 %、4 Gy+KU群で27 %となり、14 %の細胞でATM阻害後もG1アレストが維持されていた。次に4 Gy照射4-24時間後にKU5 M処理したときのp53の発現量、p53 Ser15 リン酸化、p21の発現量をウエスタンブロットによりKU非照射群と比較した。その結果、KU処理群ではp53発現量およびp53リン酸化は非照射レベルまで減少していたのに対し、p21発現量は非照射群の2倍以上のレベルが維持されていた。 以上の結果から、放射線照射後発現誘導されたp21蛋白質を安定化させる機構が存在し、それがG1チェックポイントを維持している可能性が示唆された。

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© 2008 日本放射線影響学会
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