抄録
SPF条件下で低線量率ガンマ線を連続照射したマウス脾細胞に見られる不安定型染色体異常頻度を高線量率(0.89 mGy/min)と中線量率(200 mGy and 400 mGy/day)ガンマ線照射による異常頻度と比較した。ギムザ染色法で検出した二動原体異常と環状染色体を併せた頻度(Dic plus Rc)とFISH法で検出した二動原体異常頻度(Dic by FISH)は、20 mGy/日の低線量率ガンマ線連続照射では、400日間照射(集積線量8000 mGy)までほぼ直線的に増加した。年齢補正した重回帰分析で各線量率ごとの染色体異常頻度の線量効果直線式から求めた1次項のα値は、線量率の低下に伴い有意に減少することが明らかになった。このことは中線量率(400 mGy/日)から400倍低い低線量率(1 mGy/日)間に明らかな正の線量率効果があることを示すともに、従来行われている線量・線量率効果係数(DDREF)の求める公式に問題があることを示している。そこで、高線量率ガンマ線照射と低線量率(20 mGy/日)ガンマ線連続照射で生じる染色体異常頻度を、同一の線量ごとに比較した比を、線量・線量率効果係数(DDREF)に相当する値として求めた。線量が100 mGyの場合、Dic plus Rcの頻度を指標にすると4.5、Dic by FISHでは5.2の値がそれぞれ得られたが、値は線量や染色体異常型によって変動した。以上の知見は初めて低線量率放射線連続照射の染色体に及ぼす影響を明らかにしたもので重要である。本研究は青森県からの受託調査で得られた成果の一部である。