日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: FO-2-1
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被ばく影響・疫学
高線量放射線障害におけるTNFαの役割
*柴田 知容蜂谷 みさを宮村 太一明石 真言
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キーワード: TNFα, 高線量放射線, 生存率
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抄録
腫瘍壊死因子(TNFα)は多様な生理活性を有する炎症性サイトカインであり、免疫経路を活性化するなど、生体防護機構の重要な因子であるが、過剰もしくは不適切な産生は生体に障害を及ぼし、敗血症やクローン病などの病因となる。近年、放射線による生体組織の炎症反応や細胞障害にはTNFαが関与し、抗TNFα薬剤で放射線障害を抑えることが報告されている。一方で、TNFα投与が放射線被ばく後の生存率を上げる報告もされており、放射線障害におけるTNFαの役割はいまだ明確ではない。そこで、高線量放射線障害におけるTNFαの役割を明確化するため、TNFαノックアウト(TNFα-/-)マウスを用いて実験を行った。BALB/c TNFα+/+、TNFα-/-マウスの6 Gy全身照射後30日の生存率はTNFα+/+マウスでは100%であるが、TNFα-/-マウスでは54%となり、TNFα+/+マウスに較べてTNFα-/-マウスに有意な生存率の低下がみられた。TNFα-/-マウスにrecombinant TNFαを腹腔内投与すると、照射後の生存率が100%に快復した。照射15日後には、TNFα+/+マウスに較べてTNFα-/-マウスには著名な赤血球数、ヘモグロビン(Hb)値、ヘマトクリット(Ht)値の減少がみられたが、それ以外の血球数には差がみられなかった。また、TNFα+/+マウスに較べてTNFα-/-マウスには有意な血清鉄値の上昇がみられた。肝機能検査値には差がみられず、組織解析でも消化管など出血を含めた各臓器の障害に差はみられなかった。以上の結果から、TNFα+/+マウスに較べてTNFα-/-マウスでは放射線照射によってより重度な貧血を生じ、鉄代謝機構に障害が生じているとみられ、TNFαは放射線による血液障害に重要な役割を果たしていることが示唆された。現在、この機構について解析中である。
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© 2008 日本放射線影響学会
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