抄録
紫外線B (UVB: 280-320 nm) により生じる主なDNA損傷であるCPD (シクロブタン型ピリミジン二量体) を修復するCPD光回復酵素は、大腸菌から植物まで、胎生ほ乳類以外の多くの生物が持つ酵素であり、青色光/UVAの光エネルギーを利用して単一酵素でCPDを修復する。CPD光回復酵素は、植物のUVB耐性を左右する最も主要な因子である。我々は前年度の大会において、イネの葉から精製したCPD光回復酵素はリン酸化修飾を受けており、リン酸化修飾を受けていない大腸菌発現イネCPD光回復酵素よりも、タンパク質量あたりの活性が高いことを報告した。このことから、リン酸化修飾がCPD光回復酵素の活性に影響を及ぼしている可能性が考えられたが、一方で、イネから精製したCPD光回復酵素は、大腸菌発現イネCPD光回復酵素には見られないプテリン様の光受容体を含むことも見出しており、光受容体の違いが、イネから精製したCPD光回復酵素と、大腸菌発現イネCPD光回復酵素との活性の差異を導いている可能性も考えられる。そこで我々は、リン酸化修飾が酵素活性に与える影響を明らかにするため、イネから精製したCPD光回復酵素から、リン酸化型と非リン酸化型の酵素を分離し、活性を測定した。その結果、in vitroのCPD光回復酵素活性は、リン酸化型と非リン酸化型で差が見られなかった。また一方、イネにおいてCPD光回復酵素は、DNAを有するオルガネラである核・葉緑体・ミトコンドリアの全てに移行して活性を示す。そこで、それぞれのオルガネラを単離し、各オルガネラに含まれるCPD光回復酵素のリン酸化状態を解析した。この結果を含め本発表では、CPD光回復酵素のリン酸化修飾が、酵素機能にどのような影響を与えているかについて解析した結果を報告する。
