日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: W1-1
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酸化ストレスと紫外線
UVA皮膚ゲノム毒性における酸化ストレスの影響:突然変異解析からの考察
*池畑  広伸
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キーワード: UVA, 酸化ストレス, 突然変異
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抄録
UVAのゲノム毒性の作用機序として、活性酸素生成を介した酸化型DNA損傷の生成が主張されている。しかし従来の培養細胞による研究法では、培地中に存在する光増感物質の影響が無視できず、結果を複雑にしているものと推測される。シクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)などのUV特異的DNA損傷が重要とする意見もある。 こうした問題を回避するため生体皮膚で直接UVAの影響を評価した。突然変異検出用トランスジェニックマウスの皮膚表皮にUVAで誘発される突然変異スペクトルを解析した。その結果UVA2を主要効果波長とするブラックライトでも、UVA1領域に出力を持つレーザ光(364 nm)でも、酸化型変異(G→T)ではなくUV型変異(dipyrimidine部位でのC→T)が誘発された。更にUVA1レーザで皮膚に誘発されるDNA損傷を解析したところ、8ハイドロキシグアニン及びCPDの線量依存的生成が検出された。6-4光産物は検出されなかった。この結果からCPDが原因損傷となりUV型変異が誘発されたと推定できる。またUVAが実際に酸化ストレスによるゲノム傷害を生じることも確認されたが、正常皮膚ではそれが突然変異にまで至ることなく処理されることが示唆された。 UVAのゲノム毒性はCPD生成と酸化型DNA損傷生成の両経路で発揮され得ることが明らかとなった。しかし後者によるものは正常皮膚ではほぼ完全に防御されることから、今後はこの防御機構に関する研究(DNA修復、アポトーシスなど)が重要と考えられる。またUVAによるCPDの生成機構は従来のUVCによる励起1重項を介した光化学反応だけでは説明が難しいと考えられ、新しい反応機序の探求が必要である(基礎生物学研究所大型スペクトログラフ共同利用実験4-507, 5-507, 6-511, 7-509, 8-501)。
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© 2008 日本放射線影響学会
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