日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: S1-3
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放射線発がんの基盤を形成する遺伝子・細胞・組織の応答
放射線照射後マウス萎縮胸腺におけるリンパ腫前駆細胞の特徴
*木南 凌山本 幹森田 慎一郷 梨江香藤田 裕加里広瀬 哲史石沢 良太葛城 美徳三嶋 行雄
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抄録
胸腺は胸腺細胞の増殖やT細胞への成熟を助ける特別な環境を提供しており、細胞分化やがん化についてよく研究されてきている。胸腺細胞の分化はT細胞とストローマ細胞との細胞間相互作用やシグナル伝達に依存し、前者ではNrp-1などが、後者ではNotchリガンドやWntなどが働く。この相互作用により、胸腺細胞の分化・増殖のみならず、この過程で生じた正常に機能しない細胞の除外にも関与する。調節から逸脱した細胞の除外に失敗すると、それはがんの一因になるため、逸脱細胞の出現・蓄積を抑制する機構がリンパ球内外に存在する。Notchシグナルはその代表例で、Notchリガンドの消失は胸腺細胞の分化を阻害し、シグナル過剰となると胸腺リンパ腫になる。多くの胸腺リンパ腫では、Notch1シグナルの活性化変異がみられるが、これはストローマ細胞からのNotchシグナルに依存しないで増殖する条件を与えると考えられる。  マウス胸腺にγ線を分割照射すると、萎縮胸腺の状態を経てリンパ腫が発生する。この萎縮胸腺にはprelymphomasがすでに存在すると考えられるが、prelymphomas 細胞はどのような過程で形成されるのか、どのような特徴をもつのかは明らかでない。我々は以前から放射線誘発萎縮胸腺の解析をすすめており、萎縮胸腺内に遺伝的変異を伴ったクローナル増殖する胸腺細胞が存在することを報告した。今回、この萎縮胸腺を詳細に解析した。萎縮胸腺細胞は細胞周期の遅延と高いreactive oxygen speciesをもち、細胞内のシグナル異常を示した。また、Nrp-1発現の低下を示し、ストローマ細胞による調節からの回避が示唆された。これらの異常とリンパ腫前駆細胞としての位置づけについて報告する。
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© 2008 日本放射線影響学会
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