日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: S1-4
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放射線発がんの基盤を形成する遺伝子・細胞・組織の応答
放射線による発がん過程を変えるp53遺伝子の存在状態
*大津山 彰岡崎 龍史法村 俊之
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抄録
p53遺伝子が正常なマウス(+/+)、ヘテロのマウス(+/-)、KOマウス(-/-)を用いて、発がん実験を行うとすると、発がん潜伏期については(+/+)>(+/-)>(-/-)、発がん率については(+/+)<(+/-)<(-/-)という結果が予想される。これはp53遺伝子ががん抑制遺伝子であり、さらにp53遺伝子タンパクの量的効果もみられており、一般的には妥当な考え方であると思われる。そこで、この3種のマウスを用い、β線をマウスの皮膚に反復照射する方法で放射線発がん実験を行った。結果はKOマウス(-/-)では寿命が短いために発がんは観察できなかったが、正常なマウス(+/+)とヘテロのマウス(+/-)では予想通り発がん潜伏期については(+/+)>(+/-)、発がん率については(+/+)<(+/-)の結果が得られた。一方、得られた腫瘍のp53遺伝子の突然変異とLOHを調べてみると、ヘテロマウスの腫瘍のうち約61_%_でLOHがみられたが、突然変異はなかった。野生マウスでは約78_%_に突然変異がみられ、LOHは約33_%_であった。  これらの結果は単にp53遺伝子タンパクの量的効果が反映されたのではなく、p53遺伝子の存在状態によって異なった発がん過程が選択され、がんが発生する可能性を示している。発がん過程の多様性はがん化に関わる遺伝子産物の存在や量だけでなく、遺伝子そのものの存在状態も関与するのかもしれない。
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© 2008 日本放射線影響学会
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