日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: W7-1
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医療放射線と放射線教育
医療放射線利用と放射線教育-放射線科の立場から
*芝本 雄太
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抄録
本学では、放射線医学についての医学部教育は、4年時に90分講義が16コマ割り当てられている。この枠内で臨床と基礎放射線医学のすべてを含まねばならないため、放射線概論や防護に関しては、1コマのみ割り当てている。3年のPBLでは基礎放射線医学が取り上げられることはなく、5、6年時の臨床実習においては、機会があれば、基礎的な話をすることもあるという程度である。臨床の場では、特に画像診断において、ある程度の医療被曝が起こるため、低線量被曝に関する概念はきわめて重要である。これまでは、ほとんどの場合、放射線は少しでも浴びると人体に悪影響を及ぼすと考えられ、そのように教育されてきたと思われる。しかし演者は低線量と高線量被曝は根本的に違うものと考えている。講義・教育は、できる限り客観的に行われるべきであり、高線量被曝に関しては、その弊害を教育し、防護の重要さを教えている。しかし一方では、低線量被曝の影響に関しては、ホルミシスの概念も強くなってきており、まだ一定の見解が得られていないため、高線量のデータから類推すべきか、あるいは別に考えるべきかを問題提起し、学生にも考えさせるようにしている。演者は、基本的に年に数回程度の画像診断検査には全く害がないものと考えており、そのように教えている。ただし、合わせて放射線防護の重要性は教育している。学生はそれほど強い先入観を持っているわけではないので、よく受け入れられているようである。むしろ再教育すべきは、先入観の強い放射線科医師、特に画像診断医のほうであると思われる。我々のこのような教育がさらに普遍的に受け入れられるためには、低線量放射線の影響について、さらに客観的な研究データが積み重ねられて、真実が明らかにされることが望まれる。
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© 2008 日本放射線影響学会
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