日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OD-15
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被ばく影響・疫学
放射線被ばくと心臓血管系などの疾患およびその障害・致死などとの関連性
*荘司 俊益SHOJI IsaoSHOJI Toshihiro
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抄録
放射線による異常発生の研究でもよく観察されている小頭症・中枢神経系形成障害、発ガン等と比べると、放射線被ばくとその障害致死並びに心・大血管系異常の発生などを詳細に調べる研究は少ない。また、放射線を含めて、DNA損傷環境ストレスと心臓血管系などの疾患およびその障害・致死などとの関連性には未だ不明の点が多い。本研究は、異常発生とその予防および治療の観点から、原爆、放射線などDNA損傷環境ストレスがラット並びにヒトに及ぼす影響について検討を行った。その結果、 放射線や化学薬剤が、ラット被ばく群或いは処置群に及ぼす影響には、ラット胎仔の致死、生存胎仔の円錐部動脈幹異常、半月弁、房室部、冠状動脈、心筋異常などのほか心・大血管系疾患並びに咽頭弓部発生異常が含まれ、また、それらが線量依存性(用量依存性)に増加することが認められた。一方、自然分娩を経た被爆者並びに非被爆者の流・早死産児と新生児屍の剖検所見の結果では、被爆群での頭・顔面、咽頭弓部、心・大血管系などの異常発生が高頻度に認められた。特に、剖検所見の結果では外表異常発生のほかに内臓異常発生が予想以上に多く見られ、臓器系列によって異常発生の発現頻度に差異のあることが明らかにされた。また一方、調査研究を通し、若年時の被爆および近距離直接被爆者などの循環器には動脈硬化・虚血性心・大血管系などの疾患、また他に甲状腺機能低下症、白内障、がん、骨質粗鬆症などの疾患が高い発症率で認められている。これらの結果は、DNA損傷、神経堤障害・機能異常、心臓形成領域の細胞・心筋細胞、内皮・上皮-間葉転移の異常並びに心・大血管異常、咽頭弓部異常など頭頸胸部の疾患の発症率に電離放射線など環境ストレスが関与する可能性を示唆している。若年層・近距離被爆では、これらによる疾患および加齢が促進されたことによる血管系、循環器系疾患などを引き起こすリスクが高くなり、それらの発症による健康への影響、寿命短縮・死に至る疾病のリスクを増加させることも考えられる。
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© 2009 日本放射線影響学会
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