日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P1-43
会議情報

突然変異ほか
マウス造血系における炎症とゲノム不安定性
*濱崎 幹也今井 一枝小山 和章林 奉権中地 敬楠 洋一郎
著者情報
キーワード: 炎症, ゲノム不安定性, 小核
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】放射線誘発ゲノム不安定性の原因のひとつに持続的な炎症(炎症性サイトカインレベルの上昇)が考えられている。本研究では、造血系における炎症とゲノム不安定性との関わりを生体内にて明らかにするため、長期的な持続炎症が生じる移植片対宿主病(GVHD)と、炎症誘発物質Poly(I:C)投与により惹起する急性炎症の二つのモデルを用い、マウス末梢血中の炎症性サイトカインや小核網状赤血球の頻度を調べた。
【方法】(C57BL/6 x DBA/2) F1 (BDF1) および (BALB/c x C57BL/6) F1 (CBF1) に、親マウス の脾細胞とリンパ節細胞を尾静脈より移植してGVHDを誘導した。移植後40日目の末梢血中の小核網状赤血球頻度および炎症性サイトカインを、それぞれCD71/CD61/PI三重染色およびサイトカイン抗体ビーズアレイを用いたフローサイトメトリーにて測定した。またC57BL/6、BALB/c マウスに種々の量のPoly(I:C)投与による急性効果についても同様の測定を行った。
【結果】BDF1ならびに CBF1に親マウスC57BL/6から移植を行った場合のGVHDにおいて、小核網状赤血球の頻度は、コントロールマウスに比べていずれも有意に高値を示した(それぞれp=0.001、p=0.015)。ところが、他の親マウスから移植を行った場合には、小核頻度の有意な増加は認められなかった。また、C57BL/6からの移植によるTNF-αレベルの上昇は他の親マウスからの移植に比べてより顕著であり、小核網状赤血球頻度と正の相関(それぞれr=0.48、r=0.67)を示した。Poly(I:C)投与により急性炎症を誘導したマウスでは、投与量に依存した炎症性サイトカイン、特にTNF-αレベル、および小核網状赤血球頻度の上昇が観察され、マウス系統による投与量依存性の差が確認された。
【結論】本研究の結果、TNF-αレベルの上昇を伴う炎症がゲノム不安定性に関わるということが示唆された。またゲノム不安定性に対する炎症の効果には系統差があることも明らかになった。

著者関連情報
© 2009 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top