抄録
背景:
放射線照射は腸管粘膜上皮細胞でアポトーシスによる細胞死を誘導し、腸管内腔における多くの抗原に対する生理的防御機構の不備を引き起こす。アンギオポエチンは、Tie2受容体チロシンキナーゼを介して作用する血管形成因子として知られている。アンギオポエチン(Ang)-1は、細胞内シグナリングの調節により、血管内皮細胞の無血清によるアポトーシス誘導を抑制するという報告がある。
目的と方法:
正常腸管上皮細胞におけるアンギオポエチンの保護効果を明らかにするために、IEC-18細胞は10GyのX線照射前にAng-1とAng-2処理を行い、PI3KとMAPKの活性化による細胞生存率の検討を行った。細胞生存率はトリパンブルー染色とTUNEL染色により行った。
結果:
X線照射はIEC-18細胞の細胞死を誘導した。Ang-1非処理細胞と比較して、X線照射されたIEC-18 細胞はの生存率はAng-1処理により上昇し、PI3K系のS6RPのリン酸活性化が誘導された。p90RSKやp38MAPK系はAng-1処理に誘導されなかった。X線照射によるCaspase-3の活性化はAng-1処理により抑制された。しかし、Ang-2処理では、X線照射によるIEC-18の細胞死に保護効果はなかった。Ang-2処理は、IEC-18細胞にPI3K、p90RSK、p38MAPK系の活性化を起こさなかった。
結語:
これらの結果は、Ang-1が、放射線照射による腸管障害の保護効果をもつ可能性があることを示唆している。