日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-84
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放射線応答・シグナル伝達
放射線被ばく後の赤血球減少におけるTNFαの役割
*柴田 知容蜂谷 みさを明石 真言
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抄録
腫瘍壊死因子(TNFα)は、体内に存在する生理的物質であり、被ばくによりその産生は増加する。TNFα投与は照射マウスの生存率を上げることが報告されている一方、臓器の障害を助長することも知られている。このように、放射線障害におけるTNFαの役割はいまだ明瞭ではない。昨年の当大会において、TNFα-/-マウス (TNFα-/-)ではTNFα+/+マウス(TNFα+/+)に比べ、全身照射(6 - 6.5 Gy)後の生存率が有意に減少し、TNFα-/-にTNFαを投与すると照射前ばかりでなく照射後でも生存率が上昇することを報告した。また、両マウスでは照射後の白血球数には差が認められなかったが、TNFα-/-ではTNFα+/+よりも赤血球数、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)値が有意に減少し、飽和鉄結合能(TIBC)は差がなかったが、血清鉄値の上昇と不飽和鉄結合能(UIBC)の減少が認められた。今年度はこの機序をさらに明らかにするために、TNFα-/-にTNFαを照射前に投与したところ、赤血球数、Hb、Ht値が改善するとともに、血清鉄、UIBCが改善された。また、照射したマウスから骨髄細胞を採取し、赤血球系造血能を両マウスで比較した。TNFα-/-では、未熟な細胞からなる赤芽球バースト形成能(BFU-E)、そしてより成熟した赤芽球コロニー形成能(CFU-E)はともに非照射マウスでは差が認められなかったが照射マウスでは有意に低下していた。以上のことよりTNFαが被ばく後の赤血球系の分化段階で、鉄の利用に重要な役割を担っていることが示唆された。
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© 2009 日本放射線影響学会
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