日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-82
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放射線応答・シグナル伝達
X線による骨髄細胞死の誘導とFGF1によるその抑制
*後藤 恵美隠岐 潤子本田 絵美鈴木 理浅田 眞弘萩原 亜紀子中山 文明明石 真言今村 亨
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抄録
我々は、多種類の細胞に対して細胞増殖促進・細胞死抑制活性を示すFGF1(繊維芽細胞増殖因子-1)が、放射線障害の予防・治療に有効であることを示すために、様々な放射線障害の評価系の構築とその系におけるFGF1の効果を検証してきた。これまでに、マウス小腸上皮の増殖性細胞集団であるクリプトがX線全身照射により受ける障害は、FGF1を腹腔内に前投与することにより緩和されることを報告した。今回は、腸管よりも低線量から顕著な放射線障害を受ける骨髄造血細胞の障害に着目し、X線照射後のマウス骨髄の細胞と組織におけるアポトーシスに関わる分子群を経時的に解析し、さらにFGF1の前投与がもたらす効果について解析したので報告する。
BALB/c マウス(8週齢、♂)に8~16 GyのX線を全身照射し、一定時間(2~18時間)後に単離した大腿骨について、骨髄細胞の採取と組織標本の作成を行った。まず、骨髄細胞の総タンパク質をウェスタンブロティングに供し、放射線細胞障害・アポトーシス関連タンパク質の発現レベルを解析した。その結果、DNA double strand break直後の早期修復反応の一つであるヒストンH2AXのリン酸化のシグナルが、照射線量の増加に伴って増加し、cleaved caspase-3のシグナルも増強していた。また、大腿骨を固定・脱灰・包埋した組織標本について免疫組織学的な解析を行ったところ、ウェスタンブロティングで得られた上記の結果を確認することができた。さらに、TUNEL法でアポトーシス細胞の検出を試みたところ、そのシグナルが経時的に増強していることが確認できた。一方、X線照射の24時間前にFGF1を腹腔内投与した個体では、これらアポトーシス関連のシグナルが減弱していることが認められた。これらから、骨髄造血細胞の放射線誘導細胞死に対してもFGF1が抑制効果を示すことが示された。
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© 2009 日本放射線影響学会
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