抄録
【背景】MRI装置の定常磁場の磁束密度は、S/N比の改善、微細な原子核環境の差異の検出を期待して、現在の1.5テスラから高い磁束密度へと移行しつつある。米国ではすでに7テスラのMRI装置が診断に応用され始めている。その一方で、高磁束密度の定常磁場(強定常磁場)が生体に及ぼす影響に関しては、これまでほとんど研究報告がなく、強定常磁場の生体影響は明らかになっていない。本研究では、強定常磁場がアストロサイト前駆細胞に及ぼす影響に関して評価した。
【方法】定常磁場ばく露装置は、磁場発生装置(ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー(株)JMTD-10T150M)をベースに、細胞培養環境を構築するための装置を組み込み、本実験に使用した。定常磁場ばく露条件は、装置最高磁束密度の10テスラと、装置最大磁場勾配の42テスラ/メートル(磁束密度は6テスラ)を検討した。アストロサイト前駆細胞を強定常磁場ばく露下で30分間培養後、TGF-β1でアストロサイト前駆細胞へ2日間分化誘導し、cystatin C mRNA発現量をリアルタイムRT-PCR法で、GFAPの発現を蛍光免疫染色により評価した。
【結果】cystatin C mRNA発現量に対する強定常磁場ばく露の影響は見られなかった。GFAPを用いた蛍光免疫染色においても、強定常磁場ばく露の影響は認められなかった。