抄録
【目的】
紫外線等により皮膚組織で誘導される活性酸素種(ROS)は、細胞内外で酸化ストレスを引き起こし、マトリックスメタロプロテアーゼの活性化やメラノジェネシスなどの光老化現象、及びメラノーマなどの光発がんを誘導することが示唆されている。一方、皮膚における紫外線応答の1つとしてメラノサイトにおけるメラノジェネシスが知られており、このメラノジェネシスの亢進反応は、ケラチノサイトから放出されるエンドセリンやα-MSHなどのサイトカインがメラノサイトを刺激することが関与していると報告されている。しかし、紫外線によるROS誘導とサイトカインとの関連については、未だよくわかっていない。そこでメラノーマ細胞、ヒト正常メラノサイト、ヒト正常ケラチノサイトを用い、紫外線照射によるROS誘導とメラノジェネシスの関係について調べた。
【方法】
マウスB16メラノーマ細胞を過酸化水素処理あるいは紫外線照射し、メラニン産生量、細胞内チロシナーゼ活性、およびウェスタンブロッティングにてメラノジェネシスへの影響を調べた。
【結果・考察】
30μMの過酸化水素処理によってROSを誘導すると、24時間後に、細胞内チロシナーゼ活性は約2.1倍、メラニン量は約1.3倍、48時間後には約1.6倍にまで増加した。このことは、マウスB16メラノーマ細胞では、酸化ストレスによってメラノジェネシスが誘導されることを示している。本発表では、紫外線照射により発生したROSがヒト正常メラノサイト及びケラチノサイトへ及ぼす影響について併せて報告する。