抄録
発表倫理(publication ethics)に、なぜ注目するのか。発表なくして、科学研究活動は完結しないからである。研究者は、研究の着想とデザインから、データの収集と分析をへて、最終的に成果を論文にまとめる。論文には再現性を保証する情報が記載され、結果の信頼性が担保される。論文発表を通して、研究成果は専門領域の進歩に寄与し、社会へ応用されていく。それだけに、研究発表の倫理に焦点をあてることで、研究プロセス全体の公正さをチェックできる。研究倫理といえば、ヒトや動物を対象にした問題を思い浮かべるが、発表にフォーカスをあて、研究活動の倫理性や公正さを検討するものである。バンクーバー・スタイルと呼ばれ、生命科学・医学領域でスタンダードとなったURM (Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals) は、当初は参考文献スタイルの統一をはかる目的で作成されたが、その後研究発表倫理への強い関心を反映したさまざまな声明を発表してきた。そして2003年11月の改訂では、参考文献スタイル例は付録的な扱いになり、発表倫理についての記述でまとめられるようになった。出版・発表活動に関係するスタイル規定から研究倫理規定へと発展したのである。Good Publication Practice をキーに、オーサーシップとピアレビューを中心に検討してみたい。